「日本酒コスメ」、肌にとってどんな効果があるの?

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ご当地の「地酒」がコスメに?

 貴方はどんな旅行が好きですか。非日常的な場所で楽しみたい、ゆっくり自然に癒されたい、人によってそれぞれかと思いますが、定番の楽しみ方の1つは「ご当地グルメ」です。ご当地の美味しい料理はそれだけでも旅の素敵な思い出になりますが、お酒を嗜む方であれば、「地酒」と合わせることで、その楽しみは何倍にもなることでしょう。最近は地ビールも増えてきましたが、ご当地のお米の恵みを活かした「日本酒」は料理との相性も抜群で、つい飲み過ぎてしまうものです。お酒離れの影響で消費量自体は低迷していますが、最近ではよりカジュアルな存在になってもらうため、様々な改良が続けられています。

 そんな「カジュアルな日本酒」づくりの一環として、近年では日本酒を取り入れた化粧品が相次いで開発され、販売されています。いわゆる「コメどころ」の土産店では、米を使ったお菓子や地酒が以前は定番でしたが、最近では「地酒の銘柄が入った化粧水やクリームが商品棚の一角を占めるようになりました。また、デパートやドラッグストアでも、「日本酒」を前面に押し出した商品を時々目にするようになりました。「日本酒のコスメ」にはどんな効果があるのでしょうか。

日本酒の作り方と日本酒コスメの成分

 日本酒コスメにはどのような成分が入っているのでしょうか。日本酒の原料はお米で、多糖類のデンプンが豊富に含まれていますが、①デンプンを米麹の作用で分解し、糖分を生み出す工程、②分解されて生まれた糖分を酵母の作用で発酵させ、アルコールを作る工程を並行して進めることによって生み出されます。この2種類の工程は一般的な醸造酒の場合、それぞれ別々に行うことが多いのですが、並行して行うことが日本酒の大きな特徴です。

 こうして生まれた日本酒の主成分は水とアルコールですが、他にも米のタンパク質由来のアミノ酸や分解の過程で生成した成分が含まれており、日本酒の持つ繊細な風味の由来ともなっています。日本酒に含まれるアミノ酸の種類としてはアラニンやグリシン、アスパラギン、グルタミン酸などが挙げられますが、単体の成分としても化粧品に広く利用されているものが多いです。日本酒を化粧品に利用する場合、高濃度のアルコールを肌への刺激や発火の恐れが少ない1%以下になるように調整し、他のアミノ酸などの成分の効果を活かすようにします。

日本酒コスメの効果①保湿作用

 日本酒コスメに期待できる作用としては、優れた保湿効果が挙げられます。アミノ酸には大きく分けて水と馴染みやすい親水性アミノ酸、馴染みにくい疎水性アミノ酸の2種類が存在しますが、日本酒に含まれているアラニンやグリシン、アスパラギンはアミノ基、カルボキシル基といった親水性の部分が構造として保たれているため、全て前者に分類されます。その為、水に溶けやすく、また、構造内に水分を取り込む作用(保水作用)にも優れています。

 「保湿」や「保水」の効果に優れた成分は数多く存在しますが、これらのアミノ酸の特徴として、肌の細胞に含まれている保水成分である「天然保湿因子」の一種であることが挙げられます。そのため、グリセリン等の一般的な保湿成分と比較しても肌への馴染みやすさに優れており、肌へのダメージによって失われた保湿作用を補うことができます。日本酒そのものを肌につけてもある程度の効果は期待できますが、多くの日本酒コスメには元々の成分にヒアルロン酸やセラミド等、同様に保湿作用に優れた成分が加えられているため、より高い保湿作用を期待できます。

日本酒コスメの効果②「美白」作用

 このように、保湿作用に優れている日本酒コスメですが、肌の「美白」にも大きな効果を発揮します。日本酒にはアミノ酸だけではなく、コハク酸やリンゴ酸等の「有機酸」も豊富に含まれています。これらの有機酸は酸化されやすいため、肌につけると活性酸素によって「肌の代わりに酸化」され、肌が傷つくことによるシミやシワ、たるみの発生を防止します。また、有機酸の中でも「コウジ酸」にはシミの増加を防止する上で、より効果的な性質が備わっています。

 コウジ酸は化学式C6H6O4で表されるγ-ピロン化合物で、日本酒や味噌などを発酵、糖化させる過程で生成する成分ですが、肌に塗ると日焼けやシミの原因となるメラニン色素の合成を阻害する働きがあります。肌にはメラニン色素を合成するメラノサイトと呼ばれる細胞があり、チロシンと呼ばれる成分を出発原料として、酵素チロシナーゼ、TRP遺伝子等の働きによって色素が合成されますが、コウジ酸は酵素チロシナーゼに存在する銅イオンと結合することにより、合成を阻害します。メラニン色素の合成を抑える成分は他にも存在しますが、ビタミンC誘導体などの一般的な成分が中間生成物を分解して抑制するのに対し、コウジ酸は美白成分として有名なハイドロキノンと同様に、「反応自体を抑える」成分であるため、高い効果を期待することができます。

 コウジ酸に関しては以前、発がん性等の懸念から化粧品への配合が避けられたことがありました(動物実験による発がん性)。しかし、今日では研究が進められ、人体にとっては安全性が高いことが明らかになっています。また、メラニン色素の合成抑制については十分に期待できる一方、ハイドロキノンよりは作用が大分穏やかなため、安心して日々のケアに利用することができます。

日本酒コスメで肌に恵みを!

 「保湿」「美白」と肌にとって嬉しい効果を持っている日本酒コスメですが、ややメジャーになりきれていない存在でもあります。「発酵」がメインのため大量生産が難しく、ご当地のお土産屋さん、あるいは化粧品売り場の端の方で時々見かける程度です。また、アミノ酸や有機酸が醸し出す独特の匂いは日本酒好きにはたまらなくても、好みが分かれるようです。

 しかし、その流れは変わりつつあります。最近では様々な製品が販売されるようになり、幾つかの製品は全国で見かけるようになりました。また、日本酒特有の匂いをラベンダーなどの香料でマスキングした製品も発売されており、使用のハードルはより低くなっています。肌にも嬉しく、私達にとても馴染み深い存在であるお米で作った日本酒コスメ、是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

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