水添レシチン

乳化剤

使用の目的:成分の浸透促進、乳化剤

類似した成分:レシチン

 水添レシチンとはメイクアップ製品を中心として化粧品に幅広く用いられている成分で、グリセロリン脂質の誘導体の一種です。原料に因んで水素添加大豆リン脂質や水素添加卵黄レシチンと呼ばれることもあり、常温では白色の粉末状の成分で、水にほとんど溶けない一方、油性成分とは比較的よく馴染みます。工業的には大豆や卵黄から抽出したレシチンに水素を添加することによって得られます。

 特筆すべき性質としては化粧品成分の浸透を助ける効果が挙げられます。水添レシチンは肌や皮脂の成分に近いリン脂質を主成分としているため、肌にとても馴染みやすい性質を持つ一方、リン酸基を持っているため、水性成分ともある程度馴染みます。一般的には水性成分は肌の奥に浸透しにくいのですが、水添レシチンを用いるとリポソームと呼ばれる構造を形成して肌に速やかに浸透するため、有効成分を肌の奥に届けることが可能です。また、水添レシチンの乳化剤としての作用はレシチンよりも強いため、しばしばその目的で利用されます。

 生体に幅広く含まれているレシチンとほぼ同じ構造で、かつレシチンよりも熱や酸化に強く構造が安定しているため、安心、安全に利用可能です。また、特徴的なリポソームの作用は化粧品以外の健康食品や医薬品の分野でも注目され、研究が進められています。しかし、レシチンと比較して乳化作用が強いため、乳液やクリームには向いていますが、透明感が求められる製品にはやや不向きです。

 類似した成分としてはレシチンが挙げられます。レシチンは水添レシチンに水素を付加する前の状態で、水添レシチンと同様にリポソームの形成や乳化、保湿等の効果を期待して利用されていますが、レシチンと比較して熱や酸化に弱いものの、乳化作用がやや穏やかなことが特徴です。化粧品では製品の性格に応じて使い分けがされています。

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