炭酸でスキンケア、どんな効果が期待できるの?

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「炭酸」と私達の深い関係

貴方は夏の暑い日、どんな飲み物が欲しくなりますか。体力も食欲も落ち気味で、とにかく涼しい気持ちになりたい、そんな時、炭酸飲料が恋しくなります。コーラにソーダにジンジャエール、あるいはビールにスパークリングワイン、少しぬるくなっていても、炭酸の爽やかさが暑さを忘れさせてくれます。また、冬の寒い日、大きなお風呂でくつろぎたい、といった時、スーパー銭湯の炭酸泉に入るととてもよく温まります。

このように、炭酸は私達の生活を彩る上でとても欠かせないものですが、化粧品の世界でもよく取り上げられる成分です。最も有名なものとしては「泡の出る入浴剤」で、家のお風呂に入れることで炭酸泉の気分を手軽に実現できます。また、最近では炭酸が一部のシャンプーや洗顔料にも取り入れられています。一般的なシャンプーや洗顔料はプラスチックの容器やチューブに入っていますが、最近ではひときわ目立つ金属製の容器に入った「炭酸シャンプー」や「炭酸洗顔」を謳った製品が店頭に並べられています。

炭酸はそもそもどんな成分なの?

とてもよく知られた存在である「炭酸」ですが、実は「二酸化炭素」と呼ばれる成分の通称で、狭い意味では二酸化炭素が水に溶けたもののことを指します。二酸化炭素は空気中にも多く存在する成分で、化学式CO2で表される気体です。アイスクリームが好きな方は保冷剤としてのドライアイス(圧力をかけると固体になります)、環境問題に関心が強い方はいわゆる「温室効果ガス」としてもお馴染みかもしれません。

炭酸の化学的な特徴として、安定で他の成分と反応しにくい、いわゆる「不活性ガス」であることが挙げられます。そのため、化粧品の成分として取り入れても他の成分と反応したり、肌に炎症を引き起こしたりすることがありません。また、「不活性ガス」に分類されるものには同様に空気中に多く含まれる窒素やアルゴンなどがありますが、二酸化炭素は他の成分と比較して水に溶けやすいため、他のガスよりも汎用的に使用可能です。

 「炭酸」の効果は二酸化炭素以外の成分でも期待できます。代表的な例としては泡の出る入浴剤などに含まれる炭酸水素ナトリウム(重曹)が挙げられ、有機酸等と一緒に水に入れると分解し、炭酸ナトリウムと水、二酸化炭素を発生します。炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムの水溶液は弱アルカリ性で皮脂を取り除く作用があるため、パウダー系の石鹸や入浴剤の成分として主に利用されています。

炭酸の用途①肌の血行促進

 では、化粧品に含まれる炭酸にはどのような効果があるのでしょうか。最も期待できる効果は炭酸の刺激による血行促進作用です。肌に載せて使う炭酸パックやスプレー製品が典型的ですが、炭酸ガスを噴射したことによる圧力、あるいは炭酸の細かい泡が弾ける力が肌にとって心地よい刺激となり、製品を使用した部分の血行が促進されます。炭酸ガスとして封入した場合、専用のやや嵩張る容器が必要ですが、炭酸水素ナトリウムを使った場合、小さなパウチに入るだけの量でも効果を期待することができます。

 また、炭酸は分子量が小さいため、肌によく浸透し、肌の奥の毛細血管を刺激します。肌に浸透した二酸化炭素が毛細血管まで達した場合、血管の内部に取り込まれ、周辺の血液内の二酸化炭素濃度が高くなります。そして、血液内の二酸化炭素濃度が高い状態は周辺の細胞にとって望ましくない状況であるため、身体は血管を拡張させ、それを排出しようと試みます。その結果、製品を使用した部分の血行がより促進されるのです。

この効果は化粧品よりも高濃度炭酸泉の効果としてよく知られており、ぬるめのお湯に15分程ゆっくり浸かることによって、身体全体の血行を促進できます。化粧品の場合、炭酸泉よりは低濃度かつ部分的な使用にとどまるため効果は限定的ですが、ガスの噴射や泡による物理的な刺激との相乗効果を期待することができます。

炭酸の用途②毛穴詰まりの解消

 また、炭酸ガスには毛穴を効率的に洗浄し、毛穴詰まりを解消する効果も期待できます。炭酸を含んだシャンプーや洗顔料を肌につけると水に溶け、表面に炭酸の細かい泡が発生します。そして、泡が弾ける力によって毛穴に詰まった皮脂や汚れが物理的に浮き上がり、洗浄成分で洗い流しやすくなります。この効果は炭酸水素ナトリウムを使った場合に顕著で、炭酸自体の効果に加えて柔らかい結晶によるスクラブ作用や皮脂洗浄の作用も相待って、皮脂を強力に落とすことができます。

 毛穴詰まりを解消できる成分は他にもありますが、炭酸特有のメリットとして「弱酸性」「気体」であることが挙げられます。一般的なシャンプーや洗顔料を使用した場合、洗浄作用に優れた成分はpHがアルカリ性であることが多く、本来弱酸性である肌表面の環境が崩れてしまうため、敏感肌を引き起こすことがあります。一方、弱酸性の炭酸を利用した場合、肌表面のpHが弱酸性から変化しないため、肌や頭皮をより良好な状態に保つことができます。また、マイクロビーズ等を使った場合、洗い流しきれず、肌表面に残ることがありますが、炭酸であれば気体で水にも溶けやすいためその心配も不要です。

炭酸スキンケアの課題と今後の展望

 このような効果が期待できる炭酸スキンケアですが、実は作用について未解明な部分も多く、効果を立証する研究が進められている状況です。特に毛細血管への浸透に関しては、低濃度の二酸化炭素がどこまで血行促進に寄与できるのか、あるいは他の有効成分を運ぶための手助けとなるのかについて、その有効性を疑う意見も出ています。

 しかし、炭酸に関してはその不安を補って余りあるだけのメリットが存在します。それは炭酸が他の成分と比べてもとても安全で、かつ安価に利用できることです。例え炭酸の効果が不十分であったとしても、炭酸の使用によって肌のコンディションが損なわれることもなく、手軽な値段で製品を買うことも、沢山使うのであれば自家用のサーバーを買うことも可能です。

今後、炭酸スキンケアについては、よりはっきりとした形でその効果、あるいは限界が明らかになるでしょう。それを待ってからでも遅くはないのですが、今の時点で取り入れたとしても、その努力が大きくマイナスになることはないでしょう。流行りを少し先取りする形で、日々のスキンケアで使ってみてはいかがでしょうか。

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