中々買えない「ご当地」コスメ
貴方は旅は好きですか。また、旅のどんな所が好きですか。素敵な景色や建物との出会い、地元の方々との交流、美味しいグルメなど、旅には様々な魅力が詰まっています。そして、現地の名産品との出会いもまた、旅の醍醐味の1つです。食べ物や工芸品は勿論のこと、最近では「ご当地コスメ」もその土地でしか出会えない名産品として、すっかりその立場を確立しつつあります。最も有名なものは「韓国コスメ」で、最近では入手可能なお店も増えましたが、今でもコスメを買うために行かれる方も多いと聞きます。
しかし、韓国コスメのような国単位ではなく、都道府県、あるいは市町村の名物として売り出されているようなご当地コスメは地元のギフトショップや道の駅で購入したものが気に入っても、もう一度現地に行く機会にも恵まれず、通販で買おうと思っても売り切ればかりで、一期一会の出会いになってしまうことがあります。ユニークな成分も多く、使ってみたいと思わせる魅力に溢れたご当地コスメですが、どうして中々買えないのでしょうか。
ご当地コスメが生まれた背景とは?
一部の都道府県や市町村で販売されているご当地コスメは元々、地域の特産物の廃棄する部分や出荷に適さないものを再利用する、あるいは特産物の付加価値を上げる目的で開発されました。代表的なものとしては小豆島のオリーブオイルや新潟の米ぬか、最近始まった試みとしては沖縄のパイン炭などが挙げられ、廃棄ロスの削減や農業従事者の方々のプラスアルファの収入源づくり、地元のイメージアップに大いに役立っています。
これらのご当地コスメの大半はスキンケア製品で、ご当地の果物やお米などに由来する植物油やポリフェノール、アミノ酸に由来する保湿効果や抗酸化作用などを期待して利用されます。使われている植物やその香りはユニークなものが多いご当地コスメですが、化学的な成分は良い意味で一般的で、安心して利用することができます。
「ご当地コスメ」の限界
このように、肌にも環境にも良いご当地コスメですが、広く流通させるためにはある問題が付きまといます。それは、「原料自体の生産量」です。東京都のご当地コスメとして有名なものとして伊豆大島の椿油を使ったものが挙げられ、純度100%のオイルがヘアケア、スキンケア目的で販売され、ロングセラーになっています。しかし、令和4年度の東京都全体の椿油の生産量が15.3klで、仮にその全ての量を化粧品に利用したとしても100mlのボトル(ヘアオイル2-3ヶ月分のサイズ)で153,000本しか生産できず、30,000人以上がリピーターになると品切れになってしまいます。
椿油自体は世界中、特に中国では大量に生産されており、また、国内でも長崎県などで多く生産されています。(海外産のものは一般的にカメリアオイルと呼ばれます)。そのため、あくまでも「椿油を使った化粧品」であれば国内の他地域、あるいは中国で生産されたものを利用すれば良いのですが、もしご当地コスメとして「伊豆大島の椿油」を謳っていた場合、他の地域で採れた油を使うことで、そのアイテムのイメージが幾分損なわれてしまいます。
一方、生産量を急に増やすことは現実的ではありません。「ご当地」を謳っている以上、生産できる場所は限られており、国内の農業は全体的に高齢化、新規従事者の減少に悩まされ続けています。また、先に述べたようにご当地コスメの成分は化学的には比較的お馴染みのものが多いため、他のより入手しやすい原料を使えば良いのでは?といった疑問も生じてしまいます。
「ご当地」ならではを楽しむアイテムとして
このように、ご当地コスメは思わず買ってしまうような魅力を持っている反面、その原料の供給量が限られているため、大量に生産し、流通させることが困難なアイテムです。大量に流通していない理由をその品質や信頼性の問題によるものと考えて、ご当地コスメにマイナスの印象を抱く方、あるいは「大手メーカーでは生産できない優れもの」として絶賛する方も時々いらっしゃいますが、実際にはそのようなことはなく、あくまでも「作りたくても作れない」ことが原因です。販売されていたものが無くなってしまうのも、製品自体にトラブルがあったからではなく、何らかの事情で原料を安定して手に入れられなくなった、といった事情によるものが大半です。
したがって、ご当地コスメは旅先の素敵な出会いの1つとして楽しむ、あるいは地元のものに目を向けてみる、といった使い方をするのが良いのではないでしょうか。ご当地の香りは旅の素敵な思い出を蘇らせ、私達を幸せな気分にしてくれます。また、地域の道の駅やショッピングセンターでは、地元の名産品を使った化粧品を随分と見かけるようになり、もしお気に入りのものが見つかれば、デパコスよりも直ぐに買い足すことができます。流通量が限られていても、地元であれば比較的入手は簡単です。
「気に入ってもリピートできないかもしれない」ことは、ご当地コスメの購入をためらってしまう理由になるかもしれません。しかし、一期一会を楽しむことも人生を豊かにする上で大切な要素です。「今でなければ出会えないかもしれない」といった想いを抱きながらご当地コスメを買ってみる、そんな時があっても良いのではないでしょうか。

