使用の目的:増粘、被膜形成、乳化、保水
類似した成分:カラギーナン、カルボキシビニルポリマー
ヒドロキシエチルセルロースとは化粧品に幅広く利用されている成分で、化学式[C6H7O2(OH)2O(CH2CH2O)nH]で表される高分子化合物の一種です。工業的にはHECと呼ばれることもあり、常温では白色の粉末状の物質で、水に溶けやすく、エタノールや他の有機溶媒に溶けにくい性質を持っています。工業的にはセルロースに酸化エチレンを付加することによって大量に得ることができます。
特筆すべき性質としては優れた増粘作用が挙げられます。ヒドロキシエチルセルロースを水に溶かすととろみが強くシュードプラスチック性(力を加えると粘度が下がり、取り除くと元に戻る性質)に優れた液体となります。この状態は温度やpH、他の成分に依存せず安定であり、かつ使い勝手に優れているため、化粧品の増粘剤として幅広く用いられています。また、ヒドロキシエチルセルロースは肌の上で保水性に優れた皮膜を形成する作用があるため、使用することによって肌からの水分蒸発を抑えることができます。
天然のセルロースと組成の近い成分で、肌への刺激性や毒性もないため安心、安全に利用可能です。また、ポリマーの中では安定性に極めて優れており、感触が変わってしまう心配も少ないです。しかし、安定性に優れているが故、形成された皮膜が摩擦などによって剥がれるといわゆる「モロモロ」の原因となってしまうことがあります。
類似した成分としてはカラギーナンが挙げられます。カラギーナンはヒドロキシエチルセルロースと同様に水溶性ポリマーの一種で、化粧品の増粘剤として用いられますが、ヒドロキシエチルセルロースが液体としての性質を保っているのに対し、いわゆるゲルを形成することが特徴です。化粧品にはそれぞれの特徴を活かす形で使い分けがされています。