シャンプーのトラブル、実は水にも原因があるんです

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旅先の悩みの種、髪の毛のトラブル

今の暮らしにどれだけ満足していても、人は時々旅に出たくなります。普段とは違った場所で、普段とは違った景色を見て、人と出会って、そして美味しいものを食べる、長旅は疲れるときもありますが、それ以上に人生の充実をとても感じるひと時です。

 しかし、髪の毛は私達の心よりも幾分、慣れ親しんだ場所が好きなようです。海外旅行に出掛けると、シャワーの水の出が悪い、不便な場所だけではなく、素敵なホテルで熱いシャワーを贅沢に浴びているのに、髪を洗うといつもよりシャンプーが泡立たない、髪のきしみが気になるといったトラブルを感じることがあります。また、温泉旅行に出掛けた時も同様です。ひなびた温泉で美肌の湯に浸かって、スベスベの肌には満足したけれど、やっぱり髪の毛だけはいつもより調子が悪い、そんな経験があるのではないでしょうか。アメニティーのシャンプーやトリートメント、最近は素敵なものが色々と選べますが、それらを使っても、お気に入りのものをそのまま詰め替えて持っていっても、不思議とそう感じてしまうのです。

そもそも、シャンプーはどうして汚れを落とせるの?

 そもそも、シャンプーはどのように私達の髪の毛の汚れを落とすのでしょうか。非常に良く知られた話ですが、シャンプーには界面活性剤と呼ばれる成分が含まれています。髪の毛には頭皮から分泌された皮脂が付着し、空気中のホコリなどと混ざり合うことによって汚れとなりますが、水だけでは汚れを十分に洗い流すことはできません。界面活性剤は構造内に水と馴染みやすい親水基、油と馴染みやすい親油基と呼ばれる部分を持っているため、髪の毛に対して使用すると皮脂を密着させて取り除き、かつ水で洗い流すことができます。

 親水基と疎水基の両方を持つ成分は色々と存在します。しかし、界面活性剤は肌の表面に働く表面張力を軽減し、皮脂が水をはじく作用を抑える効果があること、また、乳化作用によって外側に親水基、内側に疎水基を持ったミセルと呼ばれる構造を生成し、水と油が水中で混じり合った状態を作り出す効果があることから、皮脂や油を落とす作用にとても優れています。時には身体に悪い成分として取り上げられてしまうこともある界面活性剤ですが、全てのシャンプーにとって必要不可欠な成分です。

水がシャンプーに与える影響①温度変化

シャンプーに当たり前のように使用されている界面活性剤ですが、実はややデリケートな側面を持っています。国内メーカーの代表的なシャンプーにはラウレス硫酸ナトリウムやラウレス硫酸アンモニウムといった石油系の洗浄成分が主に使用されていますが、これらが使用されている理由として「ぬるま湯」「日本の標準的な水質」で最も泡立ちが良く、洗浄効果が高いことが挙げられます。一方、「冷たい水」「変わった水質」で使用した場合、これらの成分は十分な性能を発揮できません。

 界面活性剤の作用は水分子の動きに依存するため、低温では洗浄効果が低くなってしまいます。また、(シャワーとしては火傷してしまいそうな)高温では界面活性剤自体が水に溶けにくくなるため、やはり洗浄効果が低くなってしまいます。この温度による洗浄効果への影響は経験としてご存じの方も多いでしょう。夏のとても暑い時期には冷たい水でシャンプーをしたくなりますが、皮脂の分泌が活発になる時期であることを考えると、温かいお湯を使うことをお勧めします。

水がシャンプーに与える影響②水の硬度

界面活性剤の作用は水の温度だけではなく、水質、とりわけ硬度によっても大きく影響を受けます。界面活性剤には幾つかの種類があり、シャンプーに使用されているものの大部分は「陰イオン界面活性剤」に分類されますが、その特徴の1つとして、水中のマグネシウムイオン、カルシウムイオンと反応し、金属セッケンを生成することが挙げられます。

金属セッケンとは水に溶けない白色の物質で、バスルーム等で見かける汚れの原因でもありますが、水の硬度が高い(マグネシウムイオン、カルシウムイオンが豊富に含まれている)とその分だけ多く生成し、界面活性剤が汚れを落とす作用を弱めてしまいます。日本の水道水は一般的に硬度が低く、関東の一部の地域を除いてあまり気にせず使用することができますが、イタリアやフランス等の西欧地域、日本国内でも一部の温泉地では水の硬度が非常に高いため、シャンプーの使用感が大きく変わってしまいます。

この現象は金属イオンとの反応性が高い、石油系の界面活性剤、すなわちラウレス硫酸ナトリウムやラウリル硫酸アンモニウムを使った製品で顕著です。また、アミノ酸系の大部分の成分についても、金属イオンとの反応性が穏やかなため石油系の成分よりは穏やかですが、同様に使用感を損ねてしまいます。

「水が合わない」、そんな時にはどんなシャンプーを選べば良いの?

では、「どうも水が合わないような気がする」と感じた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。温度に関しては海外に滞在している時でも調節しやすい部分です。市販の製品は少しぬるいと感じる位の温度(38℃前後)で最も洗浄効果が高くなるため、感覚を頼りに温度を調整してみると良いでしょう。

 一方、水の硬度が問題の場合、シャンプー自体を見直してみるべきかもしれません。(水の硬度は通常の浄水器では調整できないため、シャンプーを見直すのが現実的です)界面活性剤の中でもコカミドDEA、デシルグルコシド等の非イオン界面活性剤と呼ばれるものに関しては、金属イオンと反応しないため洗浄作用に影響しません。これらは洗浄力を調整するため、しばしばココイルグルタミン酸TEA等のアミノ酸系界面活性剤と一緒に用いられますが、非イオン界面活性剤を主成分とする製品であれば、製品本来の効果をあまり損なうことなく利用することが可能です。

また、ヨーロッパ発のブランドでは硬水での使用を前提としている製品があるため、試してみるのも良いでしょう。ただ、日本国内の水の硬度が低い地域で使用する場合、特に石油系界面活性剤を使用した製品では洗浄作用が強くなり過ぎます。アミノ酸系の成分を使用した製品の方が想定に近い洗浄作用を発揮する為、そちらを選ぶ方がお勧めです。

シャンプー自体がうたっている効果、髪への優しさに着目して選ぶことは大事ですが、シャンプーの良さを十分に引き立てるためには水との相性もまた大事になってきます。長期の旅行、新しい場所での生活、人生にとって大きなイベントですが、その際には髪の毛にとって「水が合う」パートナー探しも同時に進めてみてはいかがでしょうか。

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