どうして化粧品に「グルタミン酸」が使われているの?その「旨味」とは?

化粧品に「旨味」成分?

 化粧品の安全性を表現する方法の1つとして、「食べられるコスメ」といったものがあります。特に口紅などのメイクアップ製品で「ナチュラル」を謳ったものには植物油など食品でもお馴染みの様々な成分が使われており、もし口に入っても安全なため、安心して利用することができます。また、「味覚」に関する成分も化粧品には多く使用されており、「酸味」を感じるビタミンCやクエン酸、「塩味」の塩化ナトリウムなどが有名ですが、「苦み」や「辛み」に対応する成分(センブリエキス、トウガラシエキス)も存在します。

 そして「旨味」もまた、化粧品の成分として見かけることがあります。旨味成分としてよく知られているものはグルタミン酸やイノシン酸などが挙げられ、うま味調味料の代名詞となっている「味の素」の成分としてもお馴染みですが、スキンケア製品を中心にそのまま、もしくはナトリウム塩が利用されています。一体、化粧品の「旨味成分」はどんな構造を持っていて、どのように化粧品に利用されているのでしょうか。

「旨味成分」グルタミン酸とは?

 旨味成分として有名なグルタミン酸は化学式C5H9NO4で表されるアミノ酸の一種で、構造内にアミノ基、カルボキシル基と呼ばれる部分を持っているため、他のタンパク質やアミノ酸ととても馴染みやすい性質を持っています。「味の素」が調味料として肉料理にも魚料理にも合うのは単に「うま味」を感じるだけではなく、タンパク質との相性の良さにも起因しており、日本国内に流通しているものは一般的にサトウキビ由来の糖蜜を発酵することで合成されています。

しかし、純粋なグルタミン酸はそのままでは水にあまり溶けず、また、アミノ基とカルボキシル基の電離度の違いから弱酸性を示すため、旨味だけではなく酸味や若干の刺激感を伴った調味料としてはやや扱いにくい成分です。そこで、調味料には水酸化ナトリウムと反応させ、中和することで生まれる「グルタミン酸ナトリウム」が利用されています。一方、化粧品成分としては弱酸性であることは必ずしもデメリットではないため、純粋なグルタミン酸も多く利用されています。

天然の保湿成分として

 グルタミン酸は肌の角質層の水分保持を担っている天然保湿因子の1つとして、あるいは真皮層に存在するコラーゲンを構成するアミノ酸の1つとして知られています。その構造は比較的低分子で水と馴染みやすいため、肌につけると徐々に浸透し、取り込まれる水分量を増やしたり、水分蒸発を防いだりする作用を発揮し、また、その高い吸湿性が故に空気中の水分をよく取り込みます。この作用は肌だけではなく髪の保湿にも効果的で、グルタミン酸及びそのナトリウム塩は髪の主成分であるアミノ酸とよく馴染むため、シャンプーやコンディショナーにもしばしば利用されています。

 また、グルタミン酸の重合体であるポリグルタミン酸はグルタミン酸よりも高い保湿効果を持った成分として注目され、スキンケア製品を中心に利用されています。ポリグルタミン酸は糖蜜を納豆菌で発酵させることで合成することができる成分で、納豆のネバネバの正体としても知られており、その保湿力はヒアルロン酸に匹敵します。ポリグルタミン酸の分子量は小さなものでも50,000以上であるため肌の内部には浸透しませんが、表面に皮膜を作ることで肌により多くの水分を留めることができ、潤いを長時間保つことができます。

肌のバリア機能の改善効果

 このように、保湿、保水作用に優れたグルタミン酸及びその誘導体ですが、健康的な肌への浸透性はあまり高くありません。これは肌の角質層が本来持ち合わせている「バリア機能」によるもので、バリア機能が正常に働いている場合、グルタミン酸のような(一般的なpHで)電荷を持った成分は静電気的な相互作用によって肌の表面に長く留まり、速やかには吸収されません。この働きのお陰で、私達は肌の内部を汚れや紫外線などによる刺激から守ることができます。

 しかし、紫外線や乾燥、ストレスなどによって角質層がダメージを受け、外的刺激に対するバリア機能が低下した状態では静電気的な相互作用が弱まるため、グルタミン酸は肌に比較的速やかに吸収され、失われた保湿機能を補います。また、最近では一般的なグルタミン酸(L体)と違ってあまり注目されていなかった、光学異性体の「D体」に角質層の保湿やバリア機能を担う細胞間脂質の合成を促進し、状態を速やかに改善させる効果があることが発見され、大いに注目を集めています。

肌にも髪にも旨味をもたらすグルタミン酸

 このように、グルタミン酸及びその誘導体は単に旨味を感じるだけではなく、化粧品に配合することで、肌や髪をより潤わせることができます。通常のグルタミン酸は保湿成分としてやや平凡な成分で、他の成分との組み合わせで利用されることが多かったのですが、D-グルタミン酸が持ち合わせているバリア機能の改善やポリグルタミン酸の高い保湿力は中々のもので、製品の目玉の成分として使われているケースも増えてきました。天然の植物由来の成分ではあるものの、パーム油や大豆などと同様に生産性に優れているため、今後も使われてゆく機会は増えることでしょう。貴方もその「旨さ」を味わうだけではなく、肌や髪でも感じてみてはいかがでしょうか。

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