「顔の油分を落とす」洗顔料とクレンジング、どんな違いがあるの?

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似ているようで違う「洗顔料」と「クレンジング」の効果

 貴方のメイクボックスやポーチにはどれだけのアイテムが入っていますか。メイクだけに絞ってもファンデーションに口紅、チークにアイシャドウ、BBクリーム、マニキュアなど、最低限のものだけ揃えていたつもりなのに、気が付くと驚く程増えているのが化粧品です。そして、油分を「落とす」製品にもまた、色々な種類が存在します。最も基本的なものは洗顔料ですが、その他にもクレンジングオイルや除光液などがあり、どれも私達の日々の生活にとって同様に欠かせないアイテムです。

 しかし、ここで1つの疑問が浮かびます。どうして洗顔料では上手くメイクを落とせないのでしょうか。洗顔料を使うと皮脂をスッキリ落とすことはできても、メイクはどうしても残ってしまいます。急なお泊りでクレンジングオイルの持ち合わせがなくて、無理にこすり取った経験もある方も多いでしょう。一方、クレンジングを使うと洗顔後のすっきり感は少ないものの、優しく拭き取るだけでしっかりとメイクを落とすことができます。両者の効果の違いはどうして生まれるのでしょうか。

洗顔料の主成分=皮脂を落とすもの(高級脂肪酸、高級アルコール)

 一般的な洗顔料は石油やパーム油等から得られる界面活性剤を主成分としています。代表的なものはラウリン酸やミリスチン酸といった高級脂肪酸、あるいはラウリル硫酸、ラウレス硫酸といった高級アルコールのナトリウム塩、広義で「石鹸」と呼ばれる成分です。

 これらの成分は構造内に水と馴染みやすい親水基(カルボキシル基もしくは硫酸基)と油と馴染みやすい親油基(炭素鎖)と呼ばれる部分を持っており、肌につけると皮脂側に親油基、外側に親水基が並ぶ性質を持っています。また、親油基側は皮脂の主成分であるオレイン酸などの脂肪酸、及びグリセリンエステルと組成が極めて似ているため、皮脂とよく馴染みます。そして、親水基側は水とよく馴染むため、水やお湯を使うと簡単に洗い流すことができ、過剰な皮脂を肌から取り除くことができます。

 洗顔料の「皮脂を落とす」作用は他の成分の組み合わせによって強くすることができます。パパインやリパーゼなどの酵素を配合すると皮脂のタンパク質や脂肪を分解し、洗浄効果を高めることができます。また、コーンスターチや炭のような付着性に優れた成分を配合することにより、毛穴などに詰まった皮脂をより取り除きやすくなります。

 このように、皮脂を取り除くことに優れた高級脂肪酸、高級アルコール系の石鹸ですが、メイク落としはやや苦手としています。メイクのベースとなる油分はミネラルオイルやシリコーン、合成エステル油などが利用されていますが、いずれも皮脂とはやや構造が異なるため皮脂と馴染みにくく、石鹸では浮かして落とすことができません。こすり洗いで剥がす方法もありますが、摩擦で肌にダメージを与えてしまいます。そのため、クレンジングオイルなどのメイク落としにはよりメイクの油分に近い構造を持った成分が用いられます。

クレンジングの主成分=メイクの油分を落とすもの(ミネラルオイル、合成エステル)

 クレンジングの主成分はミネラルオイルもしくは合成エステル油です。これらはファンデーションや口紅などに利用されるベース成分とよく似た構造を持っているため、肌につけると互いに混ざり合い、メイクの油分が浮き上がります。この浮き上がった油分をコットンで拭いたり、水やぬるま湯で洗い流したりすることにより、肌にあまり負担をかけることなくメイクを落とすことができます。どちらも肌へのつけ心地が軽く快適に使うことができますが、メイクの落としやすさを優先する場合はミネラルオイル、肌への負担の少なさを優先する場合は合成エステル油が好んで利用されます。

 このように、メイク落としで優れた効果を発揮するミネラルオイルや合成エステルですが、高級脂肪酸や高級アルコールとは異なり、皮脂を落とす作用は控えめです。そしてこの性質こそがメイク落としが好んで利用される理由です。皮脂とメイクの両方を落とす効果に優れた成分としてはエタノールやアセトンが挙げられますが、効果が強すぎるため必要な皮脂まで奪ってしまい、その高い揮発性によって水分も蒸発させてしまいます。そのため、エタノールは基本的に他の成分のサポート役として用いられ、アセトンはネイルの皮膜を溶かす目的に限って用いられます。

洗顔とメイク落とし、正しい使い分け方

 このように「落としやすいもの」が異なる洗顔料とクレンジングですが、普段どのように使い分ければ良いのでしょうか。ご存知の方も多いと思いますが、基本的には併用し、メイク落とし→洗顔料の順番に使うことがセオリーです。肌の上に載せたメイクをクレンジングを使って浮かせた後に取り除き、その後に洗顔料で過剰な皮脂や汚れを取り除くことにより、肌に与えるダメージを最小限にしつつ、肌にとって不要な油分や汚れを取り除くことが可能です。最近ではお湯や洗顔料で落ちることを謳ったメイクもありますが、クレンジングを使った方が確実です。

 もし一般的なクレンジングを使って刺激を感じるようであれば鉱物油やエタノールフリー処方のものを使うと良いでしょう。また、特に肌に問題を感じておらず、もっと手軽に洗い落としたいと考えている場合は「ダブル洗顔不要」の製品、という選択肢もあります。メイクとの相性で落ちにくかったり、肌の状態によっては刺激を感じたりすることもありますが、こすり洗いによる肌へのダメージを減らすことができるため、自分に合うものがあれば使い続けても良いでしょう。

 普段何気なく使っている化粧品にはそれぞれ役割の違いがあります。面倒に思うこともあるかもしれませんが、正しく使い分けることで、貴方の肌をより良い状態に保ち続けることができます。そして、ただセオリー通りに使い続けるだけではなく、調べてみることで、「どうしてそうする必要があるのか」を知ることができます。化粧品はひとことでは語り尽くせない、とても奥深い世界です。貴方ももっとその世界を覗いてみてはいかがでしょうか。

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