手作りコスメの不思議な成分「無水エタノール」とはどんな成分なの?

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手作りコスメの不思議な材料「無水エタノール」

  貴方は「手作り」は好きですか。今はあまりにも便利な時代で、食事も服もコスメも家に居ながらスマホで注文するだけで、何でも配達してもらうことができます。しかし、そんな時代であるからこそ、何かを自分で作ることには特別な響きがあります。売っているものほど上手くできなくても、手作りのものには安心や温もりを感じます。コスメも例外ではありません。手作りコスメで最もポピュラーなものは化粧水ですが、精製水にグリセリンを加えたものが安心して利用できる化粧水として紹介されています。

 しかし、この手作り化粧水をもう少し日持ちさせたい、お好みの精油を使って香りづけしたい、といった工夫を凝らそうとすると、多くのレシピの中に「無水エタノール」と呼ばれる成分が登場します。ビタミンCや尿素といった成分は抗酸化作用や保湿、といった目的が説明されていますが、「無水エタノール」はまるでクッキーの重曹のように「当たり前の存在」として紹介され、詳しく説明されるケースは多くありません。少し心配になりますが、一体どんな成分なのでしょうか。

無水エタノールとはどんな成分なの?

 無水エタノールは化学式でC2H5OHと表される成分で、広義のアルコールに分類されますが、実はお酒などにも含まれている「エタノール」「エチルアルコール」と全く同じ成分です。市販されている「無水エタノール」は一般的にエタノールの中で純度の高いものを指し、通常のエタノールの純度が80%程度(残りは水)であるのに対し、無水エタノールは99%以上と非常に高いことが特徴です。

 無水エタノールの最大の特長として、「水にも油にも馴染みやすい」ことが挙げられます。無水エタノールの構造内には水と馴染みやすい親水基、油と馴染みやすい疎水基と呼ばれる両方が存在しているため、水にも油にも溶けやすく、溶媒として様々な物質を溶かすことができます。また、エタノールを少量用いることで、水に溶けにくい成分であっても水中に少量を溶かし込むことができます。

 無水エタノールの「水にも油にも馴染みやすい」性質には副次的な効果も期待できます。よく知られている殺菌効果は「油と馴染みやすい」作用で細菌の細胞膜に侵入し、「水と馴染みやすい」作用で水分を奪うことによるものです。また、肌につけると「油と馴染みやすい」ため、余分な皮脂を除くことができます。

無水エタノールと手作り化粧水①保存性の向上

 手作りコスメに無水エタノールを加える最大の目的は保存性を良くすることです。精製水とグリセリンだけによって作られた手作り化粧水は雑菌の繁殖にとって適した環境で、常温では1~2日、冷蔵庫で冷やしても1週間程度しか日持ちしません。精製水の代わりに水道水を使えばある程度雑菌の繁殖を抑えることができますが、今度は残留塩素による刺激やミネラル分の沈殿など、使い心地に影響が出てしまいます。

 「保存性を良くしたいけど、使い心地は損ねたくない」といった状況で、無水エタノールは活躍します。無水エタノールを水で希釈したもので容器をよく洗浄し、かつ化粧水に10%程度添加することで、容器内の主要な雑菌を死滅させ、また、化粧水内での雑菌の増殖を抑えることが可能です。水、グリセリンに無水エタノールを添加した化粧水は他の成分にも拠りますが、冷蔵庫でおよそ1ヶ月程度日持ちします。手作り化粧水向けの防腐剤としては他に1,3-ブチレングリコールや1,2-ヘキサンジオールもありますが、無水エタノールが最も手軽に利用可能です。

無水エタノールと手作り化粧品②精油を溶かす

 手作りコスメに無水エタノールを加えるもう1つの目的は精油に代表される油性成分を溶かすことです。毎日使う化粧水だからこそ、自分の好みの香りを取り入れたくなりますが、水にグリセリンを溶かしたものに精油を加えても水と馴染まないため、すぐに分離してしまいます。スプレー状のものであれば振り混ぜて使えなくもないのですが、不便なだけでなく、香りが楽しめなかったり、逆に分離した精油の原液が肌についてしまったりする原因となってしまいます。

 しかし、無水エタノールを水に加えることでこの問題を解決することができます。無水エタノールは植物油等と比較して決して精油をよく溶かす成分ではないのですが、香り付けに使う程度の量であれば安定して溶かすことができます。より多くの量を溶かす場合は無水エタノールにレシチンやオレイン酸等を加えた、「ディスペール」と呼ばれる乳化剤を使うと良いでしょう。

 また、手作り化粧水の材料として市販されている成分は水に溶けやすく加工してあるものが多いのですが、もう少し自由に油性成分を取り入れてみたいと考えた場合、無水エタノールを使うことによってアレンジの幅が広がります。また、グリセリンや油性成分はべたつきが気になりますが、無水エタノールには蒸発し、周りの熱を奪う作用があるため、化粧水にさっぱり、ひんやりとした感触を持たせることもできます。

正しく使って手作りコスメをもっと使いやすく!

 このように手作り化粧水を長持ちさせたり、アレンジの幅を広げたりする上で欠かせない成分である無水エタノールですが、注意が必要な点があります。最も注意すべき点は肌への刺激性です。無水エタノールは化粧品に含まれる成分の中でも刺激が強い方に分類されます。防腐剤の含まれていない肌に優しいものを作りたいと考えていたのに、使い過ぎてしまっては肌にとってむしろ逆効果になってしまいます(化粧品向けの防腐剤は概ね刺激の少ないものが利用されています)。

 また、無水エタノールは油分を溶かすため、肌につけると皮脂が取り除かれてしまいます。アセトンのように根こそぎ奪ってしまうことはないものの、皮脂不足の乾燥肌で悩んでいる場合は慎重に使用するようにして下さい。夏場には鬱陶しく感じてしまうこともある皮脂ですが、本来は皮膚のコンディションを保つ上で欠かせないものです。

 しかし、このような注意点こそあるものの、手作りコスメにとって無水エタノールのもたらす保存性やアレンジの幅の向上は欠かせない要素です。週末にまとめて作って冷蔵庫で保管ができる、季節に応じて好みの香りや成分を取り入れられるといったメリットは使い続けるための大きなモチベーションとなるでしょう。これまで何となく敬遠していた方も、一度取り入れてみてはいかがでしょうか。

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