トコフェロール

成分

使用目的:油性成分の酸化防止剤

類似した成分:トコトリエノール

トコフェロールとは油性の化粧品に広く使用されている成分で、化学式C29H50O2で表される物質です。常温では黄色~赤褐色の液体で、複数の構造を持つ脂溶性ビタミンであるビタミンEの一種です。トコフェロールは自然界に広く存在する物質で、天然ビタミンEとも呼ばれ、化粧品向けとしては大豆油や菜種油等の植物油から抽出されます。

 特筆すべき性質としては酸化防止剤としての役割が挙げられます。化粧品に含まれる脂質類が活性酸素と触れると肌にとって有害な過酸化脂質が生成し、かつその過程でラジカル反応と呼ばれる連鎖反応が起こり、過酸化脂質が次々に生み出されてしまいます。ビタミンEは構造内に芳香環及び芳香環に繋がったヒドロキシル基を持っていますが、このヒドロキシル基が脂質類の代わりに酸化され、ビタミンEラジカルとなることにより、脂質類が酸化されるのを防ぐことが可能です。ビタミンEラジカルの状態になると抗酸化作用を失ってしまいますが、ビタミンCによって還元することが可能なため、一緒に用いられることがあります。

  油性成分に溶けやすく肌への刺激性もないこと、また、食品にも利用されていることから安心、安全に利用可能な成分です。しかし、非常に酸化されやすいため、肌に浸透させ、角質層で抗酸化作用を発揮させようとして配合した場合、必要な部分に届くまでに大半が酸化され、十分な効果を得ることができません。肌に対する抗酸化作用を期待する場合は酢酸トコフェロール等、トコフェロールの構造を一部変更し、安定化させた成分が用いられます。

 類似した効果を持った成分としては同じくビタミンEの一種であるトコトリエノールが挙げられます。トコトリエノールはトコフェロールと同様の活性を示しますが、構造内に複数の二重結合を持つため、トコフェロールより理論的にははるかに強い抗酸化作用を持ちます。しかし、抗酸化作用が強すぎるが故に不安定であり、実用的にはトコフェロールの方が使いやすい成分です。酸化防止剤としてはトコフェロールが好んで使用され、トコトリエノールはその優れた紫外線吸収能を活かし、製品の退色防止剤として用いられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました