化粧品の代表的な保湿成分、コラーゲン
肌をいつまでも美しく、健康的に保つためには毎日のスキンケアが欠かせません。頑張ったご褒美のエステ、断腸の思いで買った化粧水も崩れかけた肌の調子を戻してくれますが、良い状態を保つには、仕事やスポーツの様に日々の小さな積み重ねこそが大事です。そして、スキンケアのための化粧品の最大の役割が「保湿」です。肌は私達を色々な刺激から守り、傷ついても自分で再生する力強さを持っていますが、乾燥には弱く、乾燥によってバランスが崩れると様々なトラブルを引き起こします。
化粧品には様々な保湿成分が使用されています。保湿成分には大きく分けて油の膜で蓋をして、表面からの水分蒸発を防ぐもの、肌に浸透させて肌が水分を保つ作用を助けるものがありますが、毎日使うものであるため、保湿効果と同時に肌への馴染みやすさも重要です。
肌によく馴染むためにはなるべく肌の成分に近いものが好ましいのですが、その条件に最も適した成分の1つがコラーゲンです。
コラーゲンは肌を形成している物質の1つで、肌にハリを与える役割を担っていますが、同時に分子内に水分を保持するため、優れた保湿効果を持っています。コラーゲンは肌への馴染みやすさ、保湿効果の高さを期待する形で多くの化粧品に取り入れられています。
肌に含まれているコラーゲン、どんな働きをしているの?
肌に元々含まれているコラーゲンはどんな働きを担っているのでしょうか。コラーゲンは膠原質とも呼ばれ、肌の真皮層を形成している成分の1つです。繊維状の構造が特徴的で、同じく真皮層を形成している成分であるエラスチンが弾力性に優れているのに対し、コラーゲンは強度に優れており、肌を支える役割を担っています。また、肌だけではなく骨や血管、毛髪を強くしなやかにするためにも欠かせない成分です。
肌や組織の材料として優れているだけではなく、コラーゲンは組織内に大量に水と馴染みやすい構造を持っているため、水分を保持する作用にも優れています。したがってコラーゲンが多く含まれた組織は適度な水分が保たれ、乾燥を防ぐことが可能です。
肌に含まれているコラーゲンは紫外線による活性酸素の発生や糖化等によってダメージを受けますが、若く健康な肌の場合、タンパク質を原料として十分な量が合成されます。しかし、加齢によって合成能力は落ちてしまうため、肌の状態を維持するための努力が必要になります。サプリメントとしてのコラーゲンはそのものを肌に届けるのではなく、コラーゲンを作るための材料を身体に届ける目的で使用されます。
化粧品のコラーゲン、実際にはどんな成分なの?
では、化粧品に使われているコラーゲンはどのような役割を担っているのでしょうか。前項でコラーゲンが身体の組織の材料として使用されていることを紹介しましたが、化粧品として肌に塗った場合、残念ながら肌の内部の組織を補うことはできません。化粧品に含まれている成分の中で、比較的構造(分子量)が小さな分子は肌の表面から吸収され、肌の奥深くまで浸透して生理的活性を発揮することを期待できますが、コラーゲンは構造が比較的大きいため、コラーゲンが不足している真皮層まで十分に浸透することができず、表皮層に留まります。
しかし、表皮層に留まったコラーゲンは真皮層のコラーゲンと同様の保湿効果を示し、特に同じく肌を構成している成分であるエラスチンと併用することにより、高い保湿効果を期待できます。また、一部の製品では加水分解を行い、より分子量を小さくした低分子コラーゲンを用いることにより、肌のより深い部分で保湿を担うようにデザインされた製品も発売されています。根本的な問題である真皮層のコラーゲン不足を解決することはできませんが、毎日のスキンケアに取り入れることにより、みずみずしい肌を保つことが可能です。
「生コラーゲン」はどんな成分なの?
コラーゲン(あるいは加水分解コラーゲン)は肌の保湿成分として、様々な化粧品に取り入れられていますが、近年では「生コラーゲン」と呼ばれる成分が一部で注目を浴びています。これはどのような成分なのでしょうか。
「生コラーゲン」は名前が示す通り、非加熱のコラーゲンのことを指します。通常のコラーゲンは化粧品に配合する際、成分としての安定性や浸透性を優先するため、熱処理して分解したもの、あるいはさらに加水分解し、分子量をより小さくしたものが用いられますが、生コラーゲンはそのまま肌の構造に近い状態で使用されます。加熱処理したコラーゲンと比較して親水基と呼ばれる水と結びつきやすい構造を多く持っており、保水力に大変優れているのが特徴です。
生コラーゲンは分子量が通常のコラーゲンより大きいため、肌への浸透性に関しては劣っています。化粧品は「肌に浸透する」ことが大事とされていたため、加水分解コラーゲンやコラーゲンペプチドが古くから着目されていたのに対し、生コラーゲンはやや着目されない存在でした。しかし、近年になって「肌に浸透しない化粧品も悪くない」ことが広まると、保水力に優れた成分として着目されるようになります。まだ生コラーゲンを取り入れている化粧品は多くはないのですが、今後、広まってゆくことが予想されます。
多種多様なコラーゲンの役割
科学や化粧品に詳しくない人にとっても馴染みの深い成分であるコラーゲンですが、実はかなり奥の深い物質です。肌に含まれているもの、化粧品に使用されているもの、あるいはサプリメントに含まれるものはそれぞれ役割が異なり、また、化粧品に使用されているものに限定しても、コラーゲンの大きさによってその働きは大分変ってきます。
コラーゲンは代表的な例ですが、テレビやインターネットでは化粧品について、「この成分が効く」といった紹介が単刀直入にされることがあります。その紹介自体は誤りではないのですが、詳しい資料を調べてみると例え身体に含まれている成分であっても、化粧品では実は違った作用を発揮している、といったことがあります。毎日のように使う化粧品をよりよく知るために、気になった成分があれば調べてみることをお勧めします。思わぬ発見があって、より製品に親しみを感じるかもしれません。
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