日々の暮らしに欠かせない「カフェイン」
朝の目覚めの1杯に、忙しい仕事や家事の合間のひと息に、あるいはおしゃべりのお供に、ふとコーヒーや紅茶が飲みたくなることがあります。果汁100%のジュースやハーブティーもとても美味しく、身体に良い成分が多く含まれていますが、もう少し元気や集中力が欲しい、会話を弾ませたい、そんな時に思い浮かぶのはコーヒーや紅茶ではないでしょうか。どちらも缶やティーバッグで気軽に飲むことができる一方、豆の挽き方、茶葉の入れ方にこだわるととても奥が深い飲み物です。
どうして人はコーヒーや紅茶に惹かれるのでしょうか。その大きな理由の1つはコーヒー豆や茶葉に含まれているカフェインです。カフェインの摂取は特に精神的に疲れている時には効果てきめんで、切れかけた集中力をもう一度取り戻すことが可能です。また、栄養ドリンクの成分としても有名で、もうひと頑張りが必要な時に好んで飲まれています。
そんなカフェインですが、最近では化粧品にも取り入れられるようになりました。肌のむくみを取りたい、目元のクマを何とかしたい、あるいは新陳代謝を高めたいといったニーズに答えるべく、カフェインを配合した化粧品が開発されています。健康食品のように飲むのではなく、「肌に塗る」ことによって効果が発揮されるもので、にわかに注目されるようになっています。
ところで、カフェインってどんな成分なの?
ところで、カフェインとはどのような成分なのでしょうか。カフェインは「眠気覚まし」「飲みすぎると眠れない」成分として知られていますが、化学的には植物が外敵から身を守るために合成する成分であるアルカロイドと呼ばれる物質の一種です。代表的なアルカロイドとしては煙草に含まれるニコチンや鎮痛剤として有名なモルヒネ、ジャガイモの芽に含まれるソラニンなどが挙げられ、あるものは薬として、あるものは毒として神経に作用します。
カフェインを含んだ食品を摂取すると体内に吸収され、交感神経系を刺激します。交感神経は本来、外敵から身を守るために発達した仕組みで、カフェインを摂取した身体では心拍数が上がる、脳が活性化する、疲労を感じにくくなるといった変化が起こります。コーヒーや紅茶が疲労感からの回復に効果的なのはそのためです。
また、カフェインは水との馴染みが良く分子量が小さいため、肌からも直接体内に吸収されます。化粧品の多くの成分は体内に吸収させるのではなく、皮膚の表層に浸み込ませることによって肌の機能を補いますが、カフェインはこの性質により、皮膚のより深く、あるいはその奥の血管に対して直接働きかけることが可能です。
カフェイン入りの化粧品の効果①血管の拡張作用
カフェイン配合の化粧品に期待できる効果として、第一に挙げられるのが血管をピンポイントで拡張させる働きです。カフェインが交感神経に作用すると血管を収縮させて血圧を上げるため、頭痛薬等では症状を緩和するために利用されていますが、皮膚の表面に塗った場合、皮膚から吸収されて末梢血管に作用し、逆に血管を拡張させます。
この効果は肌のどこに塗っても得ることができますが、特に必要とされるのは目元周りで、アイクリームやアイシャドウなど目元周りに使用する化粧品に多く用いられています。目元周りは皮膚が薄いため、血の巡りが悪いと静脈血の青みがかった色が見えてしまい、クマの原因となります。カフェインを含んだ化粧品を目元周りに使用して血管を収縮させることにより、目のクマを目立たなくすることが可能です。また、血行を良くすることによって代謝も良くなるため、目元のむくみを改善する効果も期待できます。
カフェイン入りの化粧品の効果②肌を引き締める作用
カフェイン入りの化粧品に期待されるもう1つの効果は皮脂の分泌を抑制し、肌を引き締める作用です。カフェインは交感神経に作用することによってノルアドレナリンの分泌を促進しますが、同時に男性ホルモンの皮脂の分泌を促す作用も抑えます。また、皮膚に塗った場合、皮膚周辺の細胞に働きかけ、皮脂の合成を抑える働きも持っています。したがって、カフェインを肌に塗るとその周辺で皮脂が分泌されにくくなります。
カフェインの持つ別な作用も肌の引き締め効果に関わっています。カフェインには抗炎症作用があり、炎症の原因となるサイトカインと呼ばれる物質の合成を抑制します。皮膚表面でサイトカインが合成されると炎症から皮膚を守ろうと皮脂が分泌されるため、サイトカインの合成を抑制することにより、結果的に皮脂の分泌を抑えることが可能です。また、カフェインには抗酸化作用が備わっており、活性酸素により過酸化脂質が発生し、肌にダメージを与えてしまうこと自体も防ぐことが可能です。コーヒーや緑茶の抽出物として化粧品に配合する場合、コーヒーや緑茶に含まれるポリフェノールにも抗酸化作用があるため、効果をより期待することが可能です。
カフェイン入りの化粧品、使う際の注意点は?
このようにピンポイントで高い効果が期待できるカフェイン配合の化粧品ですが、使う上では若干の注意が必要です。まず安全性に関してですが、カフェインは先にも述べたように「肌から吸収される」ため、使用量には注意が必要です。日本では配合量が制限されており、皮膚からの吸収効率も飲み物として摂取した場合と比較して良くないため、通常の使用では問題ありませんが、輸入品の中には高濃度のカフェインを含んだ製品があるため、カフェインに弱い方は避けた方が良いかもしれません。
また、カフェイン配合の化粧品の効果として謳われているものの中には、「使うだけで効果的」とはいえないものも存在します。製品の中には脂肪燃焼やアンチエイジングなど、キャッチ―な効果が宣伝されているものがありますが、実際に期待できるのは「血行を促進することにより脂肪が落ちやすくなる」「抗酸化作用によって皮膚のダメージを防ぐ」といった(化粧品としては当たり前なのですが)アシスト役としての効果です。あると嬉しい作用ではありますが、過剰に期待し過ぎない方が良いかもしれません。
人々に愛されてはいるものの、身体に悪いといったイメージもあり、化粧品の成分としてはややマイナーな存在であったカフェインですが、最近、カフェインの効果に関する見直しが進んだこともあり、化粧品にも多く取り入れられるようになってきました。高い効果を持った成分ですが、まだまだ発展途上の分野であるため、今後、より良い製品が開発されてゆくことでしょう。カフェイン入りのコスメの動向からは目が離せません。
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