暑い夏の心強い味方「ミント」
貴方は夏をどんな風に過ごすのが好きですか。海や山に出掛けるのが大好き、暑い中で味わうビールが何よりの楽しみ、エアコンの効いた家の中でひたすら読書やドラマを楽しみたいなど、人それぞれに合った楽しみ方があることでしょう。しかし、どれ程夏が大好きな人でも、時にはその暑さが辛く感じる時があるのではないでしょうか。仕事や学校が始まる月曜日の朝、猛暑日の昼下がり、寝苦しい夜、といったシチュエーションでは、暑さがとても恨めしく感じられてしまいます。
暑さがとても恨めしい時、まずは「冷やす」ことを考えるでしょう。冷たい飲み物、アイスクリームやかき氷は夏を素敵に過ごすための大事なアイテムです。また、エアコンはもはや生きてゆくための必需品です。しかし、いくら暑い夏でも「冷やしすぎ」もまた問題です。冷たいものの摂り過ぎやエアコンの効かせ過ぎは血の巡りを悪くさせ、体調不良の原因になってしまいます。
そんな時の心強いアイテムとして、ミントの仲間、「ペパーミント」や「ハッカ」(ジャパニーズミント)が挙げられます。ペパーミントのハーブティーやハッカのキャンディを飲んだり食べたりした後に、不思議と身体がひんやり感じた、といった経験は誰もが持っていることでしょう。また、ペパーミントはアロマオイルなどでもお馴染みですが、匂いを嗅ぐだけでも涼しく感じられます。
ミント由来の化粧品とその成分
「涼しさ」を手軽に感じることができるミントですが、化粧品の成分としてもお馴染みです。夏になると「涼しさ」を売りにした化粧水やクリームが店頭に並びますが、その多くにミントのエキスやミント由来の成分が利用されており、肌につけると涼しさを感じることができます。また、オールシーズンの商品にもミントは多く使われており、口紅やリップクリームのように油脂分の多く、重く感じてしまうアイテムにミント由来の成分が加わることによって、付け心地がかなり良くなります。
ハッカ由来の代表的な成分としては、葉を蒸留することによって得られる「セイヨウハッカ油」「ハッカ油」、抽出によって得られる「セイヨウハッカ葉エキス」が挙げられ、いずれもl-メントールを主成分としています。また、l-メントールはハッカ油をさらに精製することによって、もしくはミルセンを出発原料として合成することによってより純度の高いものを得ることができるため、この成分単体でもよく利用されています。
ミントの成分「l-メントール」とのその効果
では、このl-メントールにはどのような効果があるのでしょうか。肌には温度を感じるセンサーであるTRPチャネルと呼ばれる仕組みが備わっており、温度に応じて特定の部位が活性化されますが、メントールが含まれた化粧品を肌に塗るとTRPM8と呼ばれる28℃以下の温度に反応する部分を活性化させます。そのため、外気温の高い日に使用するとあたかも皮膚の表面が冷やされたように錯覚し、暑さによる不快感を軽減させることができます。一方、外気温が28℃に満たない状況ではそれ程冷たさを感じないため、夏に買った化粧水やクリームを秋以降に使っても大きな問題はありません。
ひんやり効果を期待できる化粧品にはエタノール等、揮発することによって熱を奪い、実際に身体を冷やす成分もありますが、一般的に長時間の効果はあまり期待できません。一方、メントールによるひんやり効果はデキストリン等、揮発を遅らせる成分と組み合わせて利用することによって、おおよそ1時間程度持続します。そのため、お風呂上りや寝苦しい夏の夜、汗をかいたタイミングなどで利用することによって、しばらくの間暑さを忘れることができます。
「ひんやり」だけではないミントの効果
ミントは主成分のメントールによる「ひんやり感」だけではなく、他にも肌にとって嬉しい効果も持ち合わせています。まず、メントールについては強い殺菌作用や肌に冷感をもたらすことによって毛穴を引き締め、皮脂の分泌を抑える収斂効果があるため、肌を清潔に保つ目的で使うことができます。この場合、同様の効果が期待でき、さらに皮脂を取り除く作用に優れたエタノールと一緒にしばしば用いられます。
また、セイヨウハッカ葉エキスには抗酸化作用に優れたビタミンCやタンニンやフラボノイドが含まれており、肌に塗ると紫外線によって発生した活性酸素を速やかに分解します。そのため、継続的に使用することにより、活性酸素による肌のダメージを抑え、シミやシワの発生を抑制する効果を期待できます。セイヨウハッカ葉エキス、ハッカ油の香りも多くの人にとって心地よいと感じられるもののため、様々な製品に好んで取り入れられています。
正しく使って夏を快適に!
多くの嬉しい効果を持ち合わせているミント由来の成分は、夏を乗り切るための心強い味方となってくれるでしょう。しかし、利用の際には若干の注意が必要です。先に述べましたが、ミントを使うことによる清涼感はTRPチャネルのTRPM8が活性化されることによる錯覚で、実際に体温は下がっていません。そのため、あくまでも不快感を軽減する目的で用い、水分補給や身体を冷やすことは別に行うようにしてください。
また、ミント由来のメントールについては、肌に塗った際、TRPチャネルの中でもTRPM8と同時に、痛みを感じる部分であるTRPM1を活性化させてしまいます。その為、肌の状態によっては強い痛みや刺激を感じてしまうことがあり、肌荒れや敏感肌に悩まされている場合は注意して、少量ずつ使用するようにして下さい。また、精油の原液をそのまま塗ったり、お風呂に入れて使ったりすること(精油は水に溶けないため、原液がそのまま肌に触れてしまいます)は避けるようにして下さい。
今年も暑い夏が訪れようとしています。夏を涼しく、でも身体を冷やし過ぎずに乗り切るために、ミント入りの化粧品をもっと取り入れてみてはいかがでしょうか。
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