コレステロールの役割、ご存じですか?
貴方は自身の健康にどこまで気を遣っていますか。毎年の検査にジム通い、食事管理まで万全、という方もいらっしゃるかもしれませんが、仕事に家事に子育てで忙しく、自分のことまで気が回らない、という方も多いことでしょう。毎年の健康診断で頭を抱えてしまっても、中々改善の一歩が踏み出せないものです。特に、「血中コレステロール濃度」の数字は多くの方が悩みを抱えていることでしょう。
この「コレステロール」ですが、実は身体を構成するための材料として、非常に重要な役割を担っています。身体のあらゆる場所に存在する細胞や細胞に指令を出す為のホルモンはコレステロールを原料の1つとしており、肌もまた例外ではありません。肌はケラチノサイトと呼ばれる細胞によって作られていますが、コレステロールはケラチノサイト同士を繋ぎ合わせる細胞間脂質と呼ばれる構造で、脂肪酸やセラミドと同様、重要な役割を担っています。そのため、過度なダイエットで身体のコレステロールや脂肪が失われてしまった場合、肌も様々なトラブルを抱えてしまいます。
化粧品に含まれるコレステロールとその役割
肌や体内で重要な役割を担っているコレステロールですが、化粧品の分野でも縁の下の力持ちとして重宝されています。血中濃度の印象が強いためか、植物由来の油脂と比較して注目されることは少ないのですが、化粧品を「肌に馴染ませる」成分として、コレステロールはとても適しています。
化粧品が「肌に馴染む」という表現はよく使われますが、一般的にはメイクアップ製品であれば肌へのつけやすさ、スキンケア製品であれば肌への浸透性を意味します。そして、化粧品に使われている成分が皮脂や肌のケラチノサイト、細胞間脂質と近い成分であればある程よく馴染みます。皮脂と馴染みやすい成分としてはオレイン酸を豊富に含むオリーブ油やツバキ油、保湿目的でしっかりと蓋をするのであればスクワレン(及び誘導体のスクワラン)などが用いられます。
コレステロールは肌の細胞間脂質の構成成分であるため、肌と大変よく馴染み、皮脂ともよく混ざります。そのため、コレステロールを肌に塗ることで浸透させ、何らかの理由で失われた肌のバリア機能を補ったり、他の油性成分を肌に浸透させたりすることができます。また、コレステロールは構造内に水と馴染みやすい構造を持っているため、水に油性成分を分散させるための乳化剤として用いられることもあります。
「肌と似たような成分」であれば、タンパク質を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、脂質やコレステロールが比較的分子量が小さく肌に浸透しやすいのに対して、タンパク質は分子量が大きいため肌に浸透しにくく、また、比較的腐りやすいため、「馴染ませる」目的で使われることはあまり多くありません。
コレステロールと似た成分「植物性ステロール」とは?
このような役割を担っているコレステロールですが、一般的にはヒツジの皮脂腺から分泌されたラノリンと呼ばれる油脂から分離、精製することによって得られます。しかし、大豆油などの植物由来の油脂からも似たような成分を得ることができ、フィトステロール、もしくは植物ステロールと呼ばれ、最近、化粧品の分野でも積極的に利用されるようになりました。コレステロールとフィトステロールはどのような点が異なるのでしょうか。
実は、コレステロールとフィトステロールは構造がほぼ同一であるため、化粧品として利用した場合は肌への浸透性や乳化作用、保湿効果など多くの点が共通しています。大豆由来のものが多く、製造過程に起因するアレルギーなどの心配が僅かにあるものの(リスクとしては無視できる程度です)、ナチュラルコスメなどの分野ではよりテーマに合った成分として採用されています。
但し、食品として摂取した場合、その働きは大きく異なります。植物性ステロールは体内でコレステロールのように振る舞い、かつ腸内であまり吸収されないことにより、コレステロールの吸収を阻害する働きがあります。そのため、健康食品などの分野では血中コレステロール濃度の増加を抑える目的で配合されることがあります。化粧品の分野からは離れますが、もし興味をお持ちでしたら試してみても良いでしょう。
私達の「美しさを支える」成分として
多くの方にとって、「コレステロール」や「脂肪」と美容はあまり結びつかない存在で、むしろなるべく取り除きたい存在と考えている方も少なくないでしょう。しかし、実際にはコレステロールは肌を構成する成分として欠かせない存在で、コレステロールそのもの、あるいはそれに似た構造を持った植物性ステロールは私達の日々のメイクやスキンケアにとって欠かせない存在です。
スキンケアを目的とした化粧品には希少な動物、植物から採取した、どこか特別な成分が使われていて欲しいと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際に私達の日々の肌の調子を整えているのは、皮脂や肌と馴染みやすい、もっと身近な成分であることが多いです。コレステロールは私達の肌を今後も、内側、外側両方から支えてゆくことでしょう。
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