「ユーカリ」ってどんな植物?
夏の蒸し暑い日々、毎日のスキンケアに涼しさを取り入れたい、あるいはラベンダーやローズの精油を使ってきたけれど、甘さだけではなくて、もう少し刺激的な精油を試してみたい、そんな時の選択肢の1つが「ユーカリ」を使った化粧品や精油です。清涼感のあふれる付け心地や香りは、私達の気分をリフレッシュさせてくれます。
ところで、ユーカリとはどんなものかご存じでしょうか。ユーカリとはオーストラリアを原産地とするフトモモ科の植物の一種で、広く知られているものはユーカリ・グロブルス、もしくはレモンユーカリと呼ばれる種類のものです。これらは主に精油や化粧品の原料として、あるいは育てやすい木として園芸目的で親しまれています。また、ユーカリはコアラの主食としても有名で、ユーカリの葉をのんびりと食べるコアラの姿はとても愛らしいものです。ユーカリの花は条件が良くないと咲かないため、あまり知られていませんが、2m以上に成長したものでは種類によって赤、白、黄色など色とりどりの花を楽しむことができます。
「ユーカリ葉エキス」とはどんな成分なの?
ユーカリを化粧品や精油として用いる場合、葉の部分が原料となります。一般的なユーカリの葉はコアラにとっては栄養満点の主食ですが、私達がそのまま食べたり、葉をすり潰して肌に塗ったりすることは出来ません。ユーカリの葉には未熟な梅やビターアーモンド、さくらんぼの種に含まれる青酸配糖体と呼ばれる成分が含まれており、反応すると有毒な青酸ガスへと変化します。(一部の種類はこの毒性が低く、「ユーカリ茶」として飲まれています)そこで、有効な成分のみを抽出する工夫が必要になります。
「ユーカリ葉エキス」はユーカリの葉に含まれる成分をエタノールやBG等で抽出することによって得られます。問題となる青酸配糖体は水にはよく溶けるものの、エタノールやBGには溶けない為、その性質を利用して取り除くことが可能です。(化学的に特定の物質のみを入手したい、もしくは取り除きたいといった場合、溶解度の差を利用した方法は広く利用されています。結晶を入手したい場合は抽出後、溶媒を蒸発させます)ユーカリ葉エキスにはユーカリプトール(シネオール)、テルピネオール、ピネン等の成分が含まれており、これらの成分を肌に塗る、もしくは吸い込むことによって、身体にとって嬉しい効果を得ることができます。
ユーカリ葉エキスと優しいひんやり効果
化粧品として使用した場合、ユーカリ葉エキスに期待できる第一の効果は「ひんやりとした」感触です。ユーカリ葉エキスを肌に塗ると、代表成分であるユーカリプトールが皮膚の感覚を司るセンサーであるTRPチャネルの内、冷たさを感じるTPRM8と呼ばれる部分を活性化させます。したがって、皮膚はあたかも冷たいものに触れたように錯覚し、「ひんやりと」感じるようになります。この効果はペパーミント等の主成分であるメントールも有名ですが、ユーカリ葉エキスは皮膚でメントールとは少し異なった作用を発揮します。
メントールを肌に塗ると「冷たい」と同時に「痛い」と感じられます。これは、メントールが皮膚の痛みを感じるTRPA1と呼ばれる部分をTRPM8と同時に活性化することに起因します。しかし、ユーカリ葉エキスの主成分であるユーカリプトールはTRPM8の活性化と同時に、TRPA1を抑制する働きを持っています。したがって、ひんやり効果はメントールに及ばないものの、痛みが抑えられることから化粧水や口腔ケア用品など、低刺激の方が嬉しい製品にも取り入れられています。
花言葉「再生」にふさわしい効果
ユーカリ葉エキスには「心地よさ」以外にも肌にとって嬉しい作用が確認されています。それは花言葉「再生」の通り、傷ついた肌を守り、元通りにするためのものです。ユーカリ葉エキスの主成分であるユーカリプトールには抗菌作用があり、使用した部位での雑菌の繁殖を抑えます。傷ついたりバリア機能が失われたりした肌は雑菌の影響を受けやすいため、抗菌作用はとても有用です。また、抗菌作用と同時に抗炎症作用も合わせ持っているため、炎症を起こした肌の状態を落ち着かせることができます。(抗炎症作用は精油として使った時の呼吸器に対する効果としても有名です)
また、この効果は頭皮にとっても有用です。汗をかいた頭皮には雑菌が繁殖しやすく、臭いや炎症の原因となりますが、成分を配合することによってこれらの症状を抑制できることに加え、成分自体の爽やかな匂いや程よくひんやり心地よい使用感はシャンプーの商品としての魅力を大きく引き上げます。
ユーカリ葉エキスには肌の構造が失われる働きを抑える、あるいは失われた肌のバリア機能を回復させる作用も確認されています。前者は肌の弾力性や保水を担っているコラーゲン繊維が紫外線によって分解される作用を阻害することによるもの、後者は肌のバリア機能を担っているセラミドの産生を助けることによるものです。作用自体は他の成分と比較すると幾分穏やかですが、普段のスキンケアに取り入れることによって、肌を若々しい状態に保つことができます。
刺激が強いから避けた方がいい?いいえ、心配はいりません
色々と肌にとって嬉しい効果を持っているユーカリ葉エキスですが、そのひんやりとした使い心地、あるいはユーカリ葉の毒性のイメージから、刺激の強い成分として避けられることがあります。肌が非常に弱っている場合はその刺激感が痛みとして感じられるため、使用を控えた方が良いのですが、そうでなければ取り入れても問題ありません。「刺激感」は肌のセンサーを反応させているだけで、実際に肌を侵襲しているものではありません。
ユーカリの精油が好き、といった方も是非試してみて下さい。高濃度の精油を肌に塗る使い方は原則として推奨できませんが、化粧品向けに調整したユーカリ葉エキスであれば安心して使用することができます。主に配合されているのはヘアケア製品ですが、夏場の使用にはとてもマッチした成分です。
使い心地の良さと機能性、それに加えて手に取りやすさも兼ね備えたユーカリ葉エキス、精油のユーカリと比較すると一見地味な印象ですが、中々優れモノの成分です。もしひんやりとした感触がお好みでしたら、日々のケアに使う製品を選ぶ際、着目してみてはいかがでしょうか。
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