「塗るボトックス」、アルジルリンとはどんな成分なの?

人気記事

「塗る」ボトックスが人気?

 貴方は「ボトックス」という言葉にどれ程馴染みがありますか。美容に関心のある方、あるいは都会に住んでいる方であれば、ほぼ毎週のように見聞きするのではないでしょうか。ボトックスは元々、俳優やファッションモデルなどの「魅せる」職業の方を中心に人気の施術でしたが、最近では随分と身近な存在になり、一般向けのクリニックでも見かけるようになりました。美容目的だけではなく、歯ぎしりや多汗症の治療でも使われているため、実際に施術や治療を受けた、という方も少なくないでしょう。注射を顔に打つのは確かに嫌ですが、手術に比べるとずっと安心して受けることができます。

 しかし、最近では「塗るボトックス」と呼ばれる成分を配合した化粧品が販売されるようになり、顔の表情ジワに効果的なアイテムとして注目されています。本当に「塗るだけで良い」のであればクリニックの予約すら不要で、より気軽に試すことができますが、医療向けのボトックスとはどのような成分の違いがあるのでしょうか。また、ボトックス地注射と比較してどの程度の効果が期待できるのでしょうか。

植物由来の「塗るボトックス」、アルジルリン

 「塗るボトックス」と呼ばれる成分は現在では3種類程存在しますが、最もポピュラーなものとしては「アルジルリン」が挙げられます。アルジルリンはアセチルヘキサペプチドの3(もしくは1、8など)と呼ばれることもあり、アラニンやアルギニンなど生体に存在する6種類のアミノ酸が結合することによって生成したペプチドの一種です。自然界には存在しない成分で、スペインの化学メーカーLipotec社によって開発され、その有用性から化粧品成分として使われるようになりました。

 ボトックスで利用される成分であるボツリヌストキシンは細菌によって合成される分子量の大きなタンパク質で、神経から筋肉へ信号を伝達するために用いられるアセチルコリンと呼ばれる物質を阻害し、筋肉を麻痺させる作用があります。このボツリヌストキシンの作用は大変強力で、身体のあらゆる神経の働きを麻痺させるため、日常にありふれた成分でありながら、「地球上で最も毒性の強い物質」の1つとしても知られています。アルジルリンはボツリヌストキシンの使用がかつて禁止されていたスペインで、「安全性を十分に確保しつつ、同様の作用を発揮する」成分として開発された経緯があります。

アルジルリンにはどんな効果が期待できるの?

 アルジルリンのアセチルコリン阻害作用は顔の「表情ジワ」の予防や緩和に効果を発揮します。顔の表情ジワは表情を作るための筋肉の度重なる収縮によって生まれるため、一般的なシワ予防の化粧品(保湿や抗酸化作用を謳ったもの)で十分に防ぐことはできません。一方、アルジルリンが含まれた化粧品を肌につけると筋肉の収縮が阻害され、緊張が緩んだ状態となります。この作用は即効性こそないものの、ある程度使い続けることによって肌にクセがつきにくくなり、シワを徐々に目立たなくすることができます。

 アルジルリンの効果はボトックスと比較するとかなり穏やかです。しかし、十分に安全とは言われているものの、軽い麻痺や腫れなどの副作用が出たり、そもそも「顔に注射を打つ」ことのハードルが高かったりするボトックスと比較して、通常の化粧品と同様に肌につけるだけで効果が期待できるアルジルリンは手軽かつ安心に使える成分です。また、アルジルリンの効果は同様にLipotec社によって開発された成分であるロイファシルや「毒蛇コスメ」として紹介されることもある「シンエイク」と組み合わせることでより高くなり、やや高価ではあるものの、2種類もしくは3種類を併用した製品も存在します。

 このように「表情ジワ」の改善に高い効果を発揮するアルジルリンですが、水分不足や紫外線などのダメージによって生まれる「加齢ジワ」は改善しません。加齢ジワに対してはセラミドやヒアルロン酸といった保水作用に優れた成分、あるいは肌の代謝を促進するナイアシンアミドやレチノールなどの成分が効果的です。そのため、おでこや眉間といった部分だけではなく、顔全体のシワが気になる場合は一般的なシワ予防を謳った製品と併用、あるいはアルジルリンとこれらの成分が一緒に含まれた製品を使うと良いでしょう。

肌に「働きかける」化粧品成分として

 スキンケア化粧品には石油や動植物に由来するありとあらゆる成分が利用されていますが、その大部分は肌から失われた水分や機能を補う、もしくは日焼け止めのように「肌を外的な刺激から守る」ものが中心でした。一方、アルジルリンはボツリヌストキシンにヒントを得て「新しく設計、合成された」成分で、「神経に直接作用」することによって効果を発揮する化粧品成分としては画期的な存在です。また、アルジルリンの作用を補うペプチドもLipotec社によって開発されており、今後、さらなる使い勝手の向上が期待できるでしょう。

 余談となりますが、同社によって開発されたペプチドには異なった作用を持った化粧品成分も存在し、有名なものとしてはバストアップクリームなどに配合されているアディフィリンが挙げられ、「脂肪組織の量を増大させる」効果が期待できます。ダメージを受けた肌を守って修復するだけではなく、「身体に直接作用する」成分の設計、配合は新しい時代のスキンケア化粧品のトレンドの1つになっており、より興味深い成分が登場してゆくことでしょう。今後のスキンケア化粧品の進化から目が離せません。

タイトルとURLをコピーしました